はじめに
私はロサンゼルスに住む、日米間ビジネス専門のコンサルタントである。一九七二年に家族と共に移住してから、二十年以上が過ぎた。なんと、社会人としての私のこれ迄の生活の半分以上を米国で過ごしたことになる。
だからといって、日本のことを忘れていない。日本の会社と米国の会社の間に入って働くのが私の仕事であるから、常に日本で起きていることを追いかけて行かねばならない。
幸いなことに、最近は宇宙衛星による送信のお陰で、ロスの私の自宅には同日の日本経済新聞が配達される。また、毎朝二つのUHFのチャンネルで、同じ日付けの日本の夜のニュースが見られる。勿論、日付変更線のためである。
また、私は仕事の上での必要上、年間に六回は日本に出張に行くことにしている。
こうした日本を離れている日本人の私から見ていると、日本は本当に不思議な国である。いや、日本という国が不思議なのではなく、不思議なことが次々と起きる国である。
ここで重要なことは、米国に居る私から見ると「不思議」なのであって、その現場に居られる日本人にとっては「極めて当たり前」なことである。
米国に居る日本人から見ると、日本での不思議なこと(現在、急速に変わりつつあるので、不思議だったこと)の例を上げれば、次の通りである。
「日本の企業は終身雇用が原則で、大学を卒業し入社したら一生同じ企業で働く」
「日本の企業は毎年、新卒の学生を採用する。しかも、その採用人員は毎年増えて行く」
「大卒の男子と女子では初任給は違うが、どこの大学を出ても変わらない」
「女子社員の面接で、『いつ頃、結婚しますか?』『結婚しても働きますか?』と尋ねる」
「日本のサラリーマンは、残業かカラオケで騒いで深夜に帰宅する」
「サラリーマンは会社人間になり切って、体を壊すまで働く」
「サラリーマンの住宅は年収の5倍が適当と政府は言っても、現実は10倍以上する」
「子供がいじめで自殺する」
「結婚式は一流ホテルで数百万円かけて行なう」
「官公庁の行なう事業には、多くの不正が起きやすい」
「ゴルフは会員権の金利を含めて考えれば、一回2万円以上する。でも、サラリーマンの間でゴルフは盛んである」
「東京都民の選挙権は、鳥取県の三分の一の価値しかない」
「本と化粧品の価格は全国どこでも同じ」
等々、日本の七不思議どころか、これだけで一冊の本になるほどである。
さて、こうした日本も、平成に入ってから変わってきた。毎日の新聞・TVを見ていても、次々と「かつての日本では起き得ない」いろんなことが起きて大変である。一方、上述の、外国から見ると不思議なことも、なくなりつつある。米国から見ていても、まさに「大変な時代」である。
こうした時に私の目にとまったのが、堺屋太一先生の『大変な時代』(講談社)である。早速読んでみると、日本に起こりつつある変化を適切に捉え、平易に解説されている名著である。是非、一読をお薦めしたい。
さて、私はコンサルタントといっても、机の上の空理空論を分厚い報告書にまとめる、大手のコンサルタント会社のコンサルタントではない。「今日、アメリカから来たファックスにどう返事するのか?」を企業にアドバイスする、自称「実践派コンサルタント」である。そこで、堺屋先生が適切にご指摘された「大変な時代」に、個々のサラリーマンあるいは個々の企業が、今日からどのように対処すべきであるかを明らかにするのが私の使命と考えて、本書の筆をとることにした。
本書は、勿論初めから順に読んで頂くことが原則であるが、現在、問題をかかえて特に急いで解決したい方、あるいは、一読された後で参照される必要のある方のために、下記のように問題別インデックスをまとめる。( )内の数字は、本書の各項目の番号である。
企業の今後を考えるには?(3・4・6・7・16)
企業内の組織・システムがどう変わる?(8・9)
企業・仕事のやり方がどう変わる?(5・10・12・42・43)
良い人材をどう集める?(15)
社員・部下をどう使う?(17・25・28)
これからの管理職のあり方?(11)
自分の一生を考えるには?(20・21・23・24)
会社にどう勤める?(20・21・25)
現在の職を続けるべきか?(28・30)
独立するのにどうすれば良いか?(33・34・35)
嫌な上司に泣かされている(28・31)
困った部下に手を焼いている(31)
電子メール・インターネットとは?(49・50・51)
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